グルーポ・モンターニャス1年生
三澤常美 Vientos 、Guitarista、 Charangista (全て見習い)
きっかけ
退職して1月ほど経った2019年5月9日テレビの「午後なま」(NHK総合アーカイブで日にち検索しました)で、ゲストの田中健がケーナを紹介していました。
最初は音が出ないとか30年来、平泉成の作るケーナを使っているとかいう内容でした。
全くやったことの無い楽器で、しかも管楽器は小学生のリコーダー以来大の苦手なのに何故か、私もやってみるかなと(内心コンドルが吹ければ良いかな)と思いました。
気がつけば市立図書館で河辺晃吉編「ケーナの初歩の初歩*入門」を借り、ネットで「ケーナへの道」(http://quena.chu.jp)見て水道管でケーナを作っていました。
その後近所の竹林で立ち枯れ真竹を拾ってきて節を抜いたG管ケーナを作ったりネットで中古のケーナを毎週のように買い漁ったりと現在でも笛の数だけは増加する一方です。
また50年前のギターを引っ張り出し、ウクレレやチャランゴにも手を出し大忙しです。
竹の筒に穴を開けて歌口をつけただけの単純な楽器にこれ程奥深い音色が出せる事にすっかり夢中になりました。
ネットで山梨ならグルーポ・モンターニャスがあるから一度見学に行ったらと言われて11月の練習日にのこのこ出かけました。
丁度その日はファンタシア(アンデス楽器の専門店)の25周年?記念日で、店主からケーキやコーヒーをサービスして頂き、福引まで厚かましく参加させてもらいました。
その後は、年が明けてからは御承知のようにコロナ禍に見舞われて中断して#Stay Homeの自宅練習が日課になりました。
2021年になっても第3波に見舞われて余談を許さない状況が続いていますが、少人数で広い空間を使って換気しながらのグループ練習を再開しています。
以上ここで終わってしまうと紙面が余りそうですので、ケーナをまがりなりにも作っていくことで、全くの初心者ですが私なりにこの笛について調べたり考えたことを覚書として以下に書いてみたいと思います。
ケーナの歌口考
ケーナに音を出すために吹き口にV字、またはU字型の切れ込み(歌口)を作りますが、その形状、大きさ、エッジの位置に作り手の特徴が出ます。
アルゼンチンタイプ(調律が違うので指の押さえ方が異なる)のケーナは狭い歌口で細身のものが多いようです。ピントスや河辺晃吉さんのものがあります。
今はボリビアタイプが主流となっていて太めで壁の厚いものが人気です。
ケーナの吹き口のいろいろ
(http://www.linkle.ne.jp/nagaoka/quenaMouse/quenaMouse1.htm)
吹き口を上から見たときに息が当たるエッジの位置が外側壁よりと内側よりとあります。
大木岩男さんは厚みの1/3位のところに、アハユ の初期のものはもう少し壁よりで外側はわずかに削ってある程度です。
ボリビアタイプはこの手の歌口が多いようですが、ペルータイプでは逆に厚みの中央から内側まで尺八のようなものまであります。
どちらかの歌口に慣れてしまうと笛の角度を変えないととても音が出しにくくなります。
音の傾向も少し異なるようですが、これにはエッジの先端の形状も大きく関連します。
厚みのあるエッジでは低音が朗々と響きまろやかな音、薄く尖ったエッジでは風切り音のあるケーナらしい素朴な音が出しやすいと思います。
それから歌口の幅と深さも音の出しやすさや音の大きさに関連していて、G管では歌口の幅8~11mm、深さ6~10mmくらいが多いです。
これも自分の普段使う楽器に慣れてしまうと違うものは吹きにくく感じて音が出せないこともあります。
ただそれぞれの歌口の特徴で出音が異なるため楽器の個性として魅力でもあります。
歌
大木(1/3)
アハユ(外側)
Pino(中央)
個人作(内側)
ケーナの太さ考
アルゼンチン型のケーナは細いものが多いようですが、太いものを作れない訳ではありません、逆にボリビアタイプの細いケーナも製作可能です。
細いケーナには特徴的なひなびた哀愁のある音(アントニオ・バントーバなど)がして、太いケーナには朗々と鳴る低音と繊細な高音、ビブラートの出し易い表現の幅があるように思います。
地域的にはボリビア>チリ>アルゼンチン、コロンビアの順に細くなる傾向のような気がします。
G管では内径16~21mm外径22mm~31mmと厚みにより幅があります。管の厚さ2~5mmくらいのものが多くそれにより吹き口の顎や口唇に当たる感触が変わります。
ケーナの材質考
ケーナは気鳴楽器のため内部の空気柱により音が決まり材質は関係ないという説が一般的ですが、木と竹(バンブー、女竹など)では明らかに含まれる倍音の違いを感じます。
フランスブリュッヘンの吹く木製ブロックフレーテとヤマハや全音のプラスティック樹脂製リコーダーでは違いますよね。
木の種類もクラリネットに使われるグラナディラ(アフリカンブラックウッド)、黒檀、紫檀、リグナムバイタ、パロサント、ハカランダ、モラディージョ、国産のケヤキや桜、楓、ミズメザクラなど堅い木が適しているようですが、いろいろな木から作ることが可能です。
木を筒状に加工するのは精度の高い旋盤があっても苦労するようです。
木製ケーナは一般的に倍音の少ない金属的な音になる傾向があると思います。
竹も南米のいくつかの種類の葦(カーニャ)、竹類、日本の女竹、真竹、蓬莱竹など材料により、加工時の火入れの有無や程度により芯のある音や柔らかな音になる傾向があります。
日本産の女竹は節間も長く加工性も良くケーナ
製作に向いていると思います(真竹では間の節を抜くのに苦労します)。
金属製ケーナをマグネシウム合金やジュラルミン等を加工して製作している人もいます。
一般に管の厚さが薄いため歌口の形状は余り選べません(マルコケーナなど)。
ケーナの調律考
ケーナはエッジに空気を送り込む方向や範囲、息の強さで音程の高低が変わります。
尺八のメリカリですね。
そのため調律をする場合温度(25度標準)により変わるだけでなく作製する人のふき癖や息の強さにより肯定します。
また1オクターブ目を合わせると2オクターブ、3オクターブが狂うということも起きます。
私は下の穴からあわせて行きますが(G管だとソ)チューナーを見ながらだと無意識に合わせようと息や角度が変わってしまう事もあるので良く吹く曲を吹いて音程の不自然さを調整します。
1オクターブのミから2オクターブ目が狂っていると気になるので2オクターブ目を優先します。
指穴の上を削るか下を削るかで調整するという人もいますがいまいち分かりません(ご存知の方教えてください)。
3オクターブ目は、それまでの指穴位置などで自然に決まってしまうようで調整は難しいです。
指穴を(底穴も)奥広がりにすると抜けが良くなるとか、歌口の上下の角度で3シが出しやすくなるとか一番上の穴よりも2番目を少し小さくするとか鋭利なエッジを極力なくすとか作製者によりこだわりもあるようです。
442Hz〜445Hzで少し高めに調律した方が息の吹き込み量の小さい日本人向きかと思います。
ボリビアなどの工房のものは、良く言えばおおらか、悪く言えば大雑把なものも見かけます、比較して日本人の作製したものは概して端正で、細かい所まで研磨されています。
ケーナは 奏者が自分の好みで自分に合ったものを作ることが出来るため、そういう傾向があると思います。