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で遅ればせながら映画「Perfect days」を見た。役所広司扮するトイレ清掃員の淡々としながらも人生の幸せな日々を綴った心洗われる作品だ。清掃後のランチの際、大木の陰に紅葉の実生苗を見つけ大切そうに掘り取って自宅に持ち帰り、植物育成灯の下で他の(おそらく同じように持ち帰った)小さな木々の仲間に加える。毎朝霧吹きで灌水して新芽の伸びるのを楽しみにしている。仕事終わりに古本屋に行って幸田文の「木」文庫本を買って帰り、寝る前に電気スタンドの灯りで味わうように文章を読む。
ちなみにこの本の最初は、「えぞ松の更新」という北海道の厳しい自然の森林で倒木に偶然芽生えた種が倒木を栄養にしてゆっくりと成長することで倒木に沿って一直線の並木が形成されていく様を書いたエッセイから始まる。年老いた著者が言葉を選んだ文章に新鮮な驚きがある。
話を戻すと物語は、途中別れた妻の娘が家出して頼ってきたり、行きつけのスナックの(石川さゆり扮する)ママの元彼が癌で数年ぶりに会いにきたりと彼の日々は揺らぎを見せるが、それでもゆったりとした毎日の些細な出来事の繰り返しに喜びを見出す生活は続いていく…そんな映画。
話は、変わるが去年のクリスマスイブに地元の善誘館小学校で、「ケーナ
を作って音を出そう」という授業を(卒業間近の)6年生対象にした。
この小学校でのケーナ 作りは、実は2回目で1回目は、一昨年の6月に4年生を対象にやっている。前回は、30名以上だったので竹を用意して下穴を開けたりするのに4時間以上を費やしてとても苦労した。今回は、半数以下の生徒だったので楽な訳だが、(前々月のパワーストーン倉庫での出店で)サンポーニャや自作ケーナ
、パーカッションなどの楽器が売れたので、これ幸いと前から欲しかった卓上ミニボール盤を購入した。
今回の準備も前回と同じように予め指穴と歌口を全て開けておき、工作室では、G管ケーナ の長さ(約37cm)に歌口付近で切断して、丸棒ヤスリで歌口を作るといった簡単な作業だけにした。というのも2校時のうち最初の40分でケーナ作り、2時間目は皆音楽室に移ってフォルクローレ演奏を含む二胡やサックス、トランペットといった盛り沢山の演奏を披露するという欲張り企画なので…。(本当は、ケーナ で音を出すところを2時間目でやり、子供達の喜んだり驚いたりする様子を見たかったのだが。)
私は小学校の低学年の時、通信簿に音楽で5段階評価の2をつけられた事がある。それくらい音楽は嫌いだった。今でも小学生の嫌いな科目のトップは音楽か図工だというから、その辺は昔と変わっていないようだ。だけれども自分で作った楽器から音がでて、それで立派にメロディーまで吹ける。そういった新鮮な驚きと喜びがあれば、私の音楽に対する気持ちももっと違っていたかも知れない。コスキン・エン・ハポンで知られる川俣町では、小学生が皆アルゼンチン式ケーナ を吹く。そんな風になればいいと思う。
南米ボリビアやペルー、アルゼンチン、エクアドル、チリにまたがった古代インカ帝国の楽器ケーナ 、地元の人が身近なもので作った素朴な楽器には、アンデス民族の魂が込められている気がする。人は、与えられた物ではなく、自分で作ってこそ、より理解が深まり愛着が湧くものだ。
映画「Perfect Days」を見て、ふと幸田文著「木」を図書館に借りに行った。一冊だけではもったいないので民族楽器関連の本も検索した。関根秀樹「民族楽器をつくる」、若林忠宏 「民族楽器を演奏しよう」、「スロー・ミュージックで行こう-民族音楽のすすめ-」。タイトルから分かるように民族音楽を聴いたり演奏することでmedicine music(癒しの音楽)効果、心の平穏を保つような禅の境地、打楽器を打ち鳴らす時の陶酔感、喜びの気持ちを感じるような音楽に包まれる毎日の暮らしを目指せである。
さて、この本の中では、明治学院大学教授辻進一氏が「スロー・ライフは『ゆっくり』ではなく繋がりを取り戻し、共に生きていくこと。」と述べている。氏はさらに哺乳類のナマケモノが、一本の大樹で一生を終えることもあるというが、木を枯らさぬよう1日に数枚の葉を食べ、新陳代謝を抑えて1日の大部分を「じっと」している。防御能力のほとんど無い彼らが木を降りていくのは、排泄物を肥やしとして木の根本に返すためだという。「繋がり」と「共に生きる」姿が、結果としてとてもゆっくりな生き方となったと説いている。
まー、ナマケモノがそこまで考えていたかどうかは、疑問だが、私は、フォルクローレを始めて氏のいうスローライフの「繋がり」、「共に生きる」と言う点にはいたく同意している。今後も自然素材で作られた楽器から奏でられる肩肘の張らないリラックスした音楽をスロー・ライフ スロー・ミュージックで実践してモンターニャスの皆さんと一緒に親しんでいきたい。
講座で使用したテキスト5ページあります
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新聞で紹介されました。 |